2007年05月27日

Battleフィールド

★Battleフィールド

熱くなく、ただ淡々と戦場を語る島本和彦の戦場物語〜「Battleフィールド」

島本先生の作品の基本は、熱く燃える魂を作品に入魂して行く事!
だけではなかった事を、読む人達に教えてくれる物語……
それが「Battleフィールド」です。

戦争を題材に扱った漫画と言えば、一連の松本零士氏が描く「戦場まんがシリーズ」、そして弟子にあたる新谷かおる氏の描く「戦場ロマンシリーズ」や「エリア88」「バランサー(ジャップ)」等を皮切りにして小林 源文氏の一連の戦場物が頭に思い浮かびあがりますが、それらの作品群に共通するのは、戦場において男達が燃やす(己の信条であったり、意地であったり、義務であったり、野望であったり、欲望であったり…様々な)命の炎の輝きと、消えて行く悲しさと儚さ……
松本零士氏、新谷かおる氏に影響を大いに受けたと自らが言っている、島本和彦氏が戦場物を書くとすれば、どの様な作品に仕上がるか?
大方の予想では、熱く煮えたぎる様な男達の意地と野望が燃え盛る(例を挙げるなら「大脱走」「パットン大戦車戦」「バルジ大作戦」…でしょうか?)痛快な戦場物語を描くのではないかと思うのではないだろうか?
だが島本和彦氏は、別の答えを出して戦場という舞台を描いたのであった。

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第一話〜「汝の敵」

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イタリアの古い民話で語られる、悪魔が化けた三本の髭を持つ王女の物語〜その悪魔が化けている髭を引き抜こうとした者は、みんな毒気にあてられて死んでしまうが、聖アントニウスの祝福を受けた三兄弟が、髭を引き抜こうとし、上の兄二人は髭を抜くのに成功するが、同時に死んでしまう。
残された一人の弟は、髭に化けている悪魔の寝言を聞き出す事に成功し、無事に髭を引き抜く事に成功し、聖アントニウスの加護を受けた弟と王女と王は、末永く幸せに暮らしたと言う……
そんな聖アントニウスの加護があると言われている、戦場から忘れ去られたような寒村に、突然と現れる三人の米兵……
当初は戸惑う村人だが、やがて歓迎の意味を込めたパーティーが開かれる中、奇妙な行動をし始める米兵達、昼は地雷原の前で昼寝をし、夜はパーティーで踊り狂う。
そして、そんな日が何日か過ぎた日、米兵の悪ふざけから、地雷原へと踏み込んでしまった少女と弟の二人、聖アントニウスの祝福を受けたかのように、地雷原(通称・三本髭の悪魔と呼ばれる対人地雷、「お転婆ベティ」【Sマイン】)から生還した二人に、米兵は敬意を示し、地雷原の真中に残されていた。村人達の信仰の対象である聖アントニウスのマリア像を無事に運び出し、村人達に手渡した後、村から去っていく……
そして月日は流れて、数十年……少年であった男は、米兵達の行動の真実を聞く……

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第二話〜「愛しのテディーベア

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英雄と呼ばれた戦闘機パイロットのチャーリーは、撃墜されたショックからか、幻を見るようになる。
その幻とは、子供の頃になくしたテディーベア……そして彼の横には、彼だけに見える身長7フィートの妖精テディーが何時もいるようになり、彼はそれを当然のように受入れた。
チャーリーが入れられた捕虜収容所、テディーの事を話し、その存在を当然の様に話をする、そんな何処か現実離れした行動を取るチャーリーに対して、捕虜仲間や収容所のドイツ兵も好意をしめすが、同じ捕虜仲間のアニマル、常に突っかかっていく、彼にとって憎むべきドイツ兵と仲良くしているチャーリーの行動が、我慢できない……皆はそう思ったのだが……
やがて捕虜仲間が、収容所から脱走を企てる。アニマルも一緒だ……それを聞くチャーリーは、戦争はもうすぐ終わると言う。
そして過去の出来事……彼が知っている憎しみの愚かさと哀しさを語る。
それを物陰から聞いていたアニマルは、真情を吐露する……俺は、戦争はもう嫌だと、そして自分にもテディーの姿が見えていたのだと……
そして脱走を取りやめたアニマルの代わりに、収容所から脱走するチャーリー、何とか脱走に成功しそうになった瞬間、有刺鉄線に服を引っ掛けてしまう脱走兵!
あわやと言う時に、現れたのはテディーだった!
そして優しき妖精のテディーは収容所へと残る事になる……収容所に残る友達をなぐさめる為に……

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第三話〜「エルベの笛」
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ドイツ第三帝国崩壊間近の戦争末期、脱走ドイツ兵であるハンスは、同じ脱走兵である二人のドイツ兵に追いかけられていた。
逃げ回った末に、意識を失い倒れるハンスを救ったのは、隠れていたユダヤ人の家族……彼らはハンスに三人の子供を、米軍のもとへ送り届けるように取引を持ちかけ、かくしてハンスと三人の奇妙な道行が始まる。
最初は反目していたハンスと三人であったが、やがてハンスの持つ笛によって少しずつ心が通じ合いだし、やがてハンスは自分の事を語りだす……
自分をこき使った軍に対して腹が立ち、仲間と一緒の軍の物資を横流しし、そのトラブルから仲間に追われているという事、以前に嫌なユダヤ人の親父に雇われていた時の事、そしてその親父がユダヤ人に対する迫害によって殺された時に感じた思い……
やがてハンスと三人は、米軍の部隊まであと少しと言う所まで来た時、ハンスを追いかけてきた二人のドイツ兵に追いつかれ、ハンスが撃たれてしまう。
何とか追っ手の二人を倒す事に成功したハンスであったが、既に致命傷を受けていた。
そして三人に約束をする……
先に生まれ故郷であるハメルンと言う街で待っていてくれと、必ずその街に行くからと……
そしてハンスは贖罪をし、祈りを子供たちの一人である少女ヘルガに乞う……イエス様ではなく、君に許してほしいと……
頷くヘルガの姿を見たハンスは、満足気に笑みを浮かべ笛を取り出し吹く……その笛の音が流れる中、三人は米軍の部隊がいる筈の場所へと歩いて行った。

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第四話〜「楽園のあちら側」

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ノルマンディー上陸から一ヶ月、ドイツ軍の反撃により撤退する米軍の小部隊、背後に迫るは「白い狼」と呼ばれる、女子供にも情け容赦の無い悪鬼の如きドイツ軍の部隊!
何とか近くにあったロシュの街に逃げ込んだものの、その街は人の居ない廃墟であった……だが、その廃墟の街の中にある遊園地に、なんと多数の老人達がいた。
老人達によると、若者達はレジスタンスとなり山へ篭り、他の女子供は疎開して、結果として街を離れる事を拒んだ老人だけが残されたと言う。
そして残された老人達は、戻ってくる筈の人達のために、壊れたまま放置されている遊園地を直しているのだと言う。
老人達のために遊園地の修理を手伝う米兵達、やがてメリーゴーランドだけを残して修理は完了し、看板が立てられる。
『永遠の友人、偉大なるアメリカ兵万歳!!』
立てられた看板の周りで、ささやかな宴を催す老人と米兵達……
そして、自分達と一緒に街から脱出する事を勧める米兵達に、老人達は真実を話す……
自分達は、残された者達であって、実は身内の者達は全て死んでしまっていると言う事を、そしてこの街を最後の場所にと決めていると……
迫り来る「白い狼」、米兵達は老人を残し街を脱出する……まるで、昔に聞いた御伽噺の様な街だったと思いながら……
そして一ヵ月後、米軍はドイツ軍の反撃を打ち破り、再び街へとやってくる。
破壊尽くされた街の残骸……「白い狼」の仕業であったが、当の「白い狼」はレジスタンスによって、少し前に殺されてしまっていた。
絶望を感じながら、遊園地のあった場所へと向かう米兵が見たのは、壊されていない遊園地と、そこで遊んでいる無事な姿の老人達、そして修理されているメリーゴーランドと……
『永遠の友人、我らのメリーゴーランドを修理した。偉大なるドイツ人へ』
と書かれた看板……
米兵達は、その光景を不思議な物でも見るように、何時までも立ち尽くして見入った……

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第五話〜「不死身のジャン

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荷駄を積んで山道を行くボロ馬車、それに乗っているのはジャンと言う名の老人、途中でドイツ軍の検問にあうが、そんなジャンの外見からか御座なりな検問しかせずに、その場を通すドイツ軍……だが、荷駄の下にある隠し空間には、ドイツ兵が隠れていた。
かってレジスタンスであったジャンだが、肉親を失いレジスタンスから足を洗い、残された娘と孫と暮らすようになっていた。
だが娘と孫を助け死んで行った米軍の軍曹の頼みを聞き、捕虜となっているドイツ兵を米軍へと送り届ける事になったのだが、そのドイツ兵に途中で逃げられてしまう。
何とか逃げ出したドイツ兵だが、別のレジスタンスに再度捕まり殺されそうになった最中、ラジオから流れる臨時ニュース……そのヒットラー暗殺失敗の報を聞いた時に、彼は皮肉な笑いを漏らす。
逃げたドイツ兵を探し現れたジャン、最初は敵意に満ちていたレジスタンスだが、ジャンが別名「不死身のジャン」と呼ばれたレジスタンスの英雄だと知り、彼らが逃げる事に協力する。
実はこのドイツ兵は、ヒットラー暗殺の関係者であり、ヒットラーの死と共に連合軍との休戦を結び書類を持った男であったのだが、暗殺失敗により全てが無に帰してしまった。
自分を解放して逃げろと言うドイツ兵に向かってジャンは言う。
「死人との約束は敗れない」と……
暗殺事件関係者のドイツ兵を追ってきた親衛隊、その猛攻の前に全滅するレジスタンス、やがて二人に迫ってくるが「不死身のジャン」は、逆に親衛隊を全滅させた。
米軍まで、あと少しの場所までに来た時に、ジャンは撃たれてしまう。
一緒に川へ飛び込んで逃げようというドイツ兵捕虜の言葉に対して、信用できないと言うジャン……だがジャンを撃ったのは親衛隊ではなく、捕虜となったドイツ兵の部下達であった。
助けに来たという部下の声を聞いた捕虜のドイツ兵は、ジャンを川へと落とす。
「だましやがったな」
と叫ぶジャンに向かって、続いて川へと飛び降りるドイツ兵、そして彼は言う……
「俺には、生きている奴との約束の方が大切なんだ……!」
そして二人は下流へと、米軍の部隊へと泳いでいくのであった……

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第六話〜「紅はこべ団の冒険」
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パリの街、レジスタンスに憧れる少年二人は「紅はこべ団」を結成して、自由フランスの為にたたかっていた。
そんな二人の通う学校のモレリ校長は、元レジスタンスであったが、彼だけが何故かレジスタンスが検挙された時に、家へと帰されていたのであった。
そんなモレリ校長を仲間を売った親独逸派だと嫌う二人であった。
やがてニコラに「紅はこべ団」としての大事件が起こる。
怪我をしたレジスタンを助け出すと言う大仕事、ニコラは他のレジスタンス達と連絡を取り、そのレジスタンスを脱出させようと頑張り偽造の身分証明書を運ぼうとするが、その途中でドイツ軍に見つかり持ち物を見せろと言われてしまう。
拳銃を突きつけられたニコラは、英雄として死ぬ事を願いながらも、死の恐怖に震えた末に、その荷物を見せようとするが、そんな子供に興味を失ったドイツ兵は、とっくに居なくなっており、ニコラだけが路上に残されていたのだ。
エwジスタンに偽造身分証明書(偶然にも、その偽造身分証明書の人物はニコラが通う学校の先生であった)を渡し、一緒に歩く二人だが、そんな二人を見咎めるドイツ憲兵、万事休すかと思われた瞬間に意外な人物が、横から助けに現れ二人の身分を保証した。
それは誰あろう、モレリ校長であった。
ニコラと別れた後に、レジスタンスを脱出させるために、送っていく道すがらモレリ校長は言う……自分と言う人間の弱さと、そしてその奥にある消え去る事の無い愛国心を……
そして「紅はこべ団」は、フランスが解放される日を信じ、今日も活躍するのだ……モレリ校長を少しだけ理解して……

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第七話〜「ローラン

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雪の降る寒い日、クロードとジョエルの兄弟は父親に捨てられた……
そして十数年の月日が経った戦時下のフランス、戦闘によって瓦礫と化した街中で、火事場泥棒を働く二人の男が、死体から剥ぎ取った帽子は「サンマロの狐」と呼ばれる……何度も死んだといわれながら、その度に武勲を挙げるローランの物であり、それによりローランだと勘違いされた二人は、レジスタンスの家に匿われる事となる。
匿われた家に住む母と子、レジスタンスとなって家に帰ってこない夫を気遣う母親、そして帰らない父に不満を漏らす子供……何時しかそんな母と子に対して親近感を抱き、久しぶりの安らぎを得る二人であった。
しかし突如として現れたドイツ兵によって、その安らぎは破られる……
過去にドイツ兵に母親が乱暴される所を見てしまい、助けに来てくれなかった父親を憎む子供、そんな子供にクロードは自分の身の上を話して聞かせ、信じる事の大切さをおしえる……
そしてレジスタンスとして闘かっている、母と子の父親を助けるために、二人はドイツ兵部隊と戦うがクロードは怪我をしてドイツ兵に捕まってしまい処刑を待つ身となった……だが後悔はしなかった。
そして残されたジュエルは、新たに「サンマロの狐」を名乗って戦いを続ける。

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第八話〜「穴の中」
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『苦しい……助けて……』
悪夢にうなされ、目覚めるドイツ兵がいた……
戦禍の跡も生々しい戦場、そこで米軍の小部隊が白旗を振るドイツ兵に出会う。
そのドイツ兵の言う事には、近くで砲撃による落盤によって子供が生き埋めになっていると言う話であった。
何とか子供を助けようとする米兵とドイツ兵だが、それらの努力は功を奏さない……危険だから早く退避しようと主張する米兵の一人、だが指揮官は必死に救出を試み続ける。
だが砲撃が再開され、落盤が進み子供は更に救出する事が不可能となってくる。
それでも何とか子供を救出しようとする米軍兵士達と、過去に自分が行った行為に苦しむが故に必死に救出を試みるドイツ兵……何とか助け出す事が出来ないかと考え続けた末に、退避を主張した米兵の一人が、古代エジプトで使われていた方法を使う事を主張し、それによって子供は、何とか助け出す事が出来た。
それは奇跡……人を殺す事が当然の戦場で、人を助ける事に必死になった彼らによって引き起こされた、聖ニクラウスの奇跡でもあった。

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第九話〜「コネカット州のアメリカの奇跡」

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コネカット州出身の田舎者であるシドニー・ブラウン二等兵は、映画マニアの変な奴だった。
何故なら、たとえ敵兵でも人殺しをしたくないと堂々と言うのだから……

戦争末期の欧州戦線、ブラウン二等兵が配属された分隊は、敗残兵を追って森の中へと踏み行って行く、すでに戦争は勝ち戦、気も緩んだ状態で軽口が兵士達の中に飛び交う中、コンパスが壊れた事から地雷原の真中に侵入してしまう事となってしまう。
ブラウン二等兵の機転?によって無事に地雷原を脱出し、都会育ちの他の兵が知らない様々な事によって、正確に現状を把握し導くブラウン二等兵によって、当初の目標地点へと辿り付いた分隊であったが、狙撃兵によって兵士の一人が撃たれてしまう。
執拗な狙撃兵の攻撃、撃たれて倒れている仲間を助ける為にブラウン二等兵は、野性的とも言える勘を働かせ、隠れている狙撃兵の位置を把握し、その場所へと射撃を加える……たとえ敵であっても人殺しなどしたくないのに、仲間の命を救う為に……
ブラウン二等兵の射撃の御蔭か、撃たれて倒れた兵士が止めを刺される事なく、無事に物陰に逃げ込む事が出来た。
やがてブラウン二等兵が射殺したと言う狙撃兵を確認する為に、分隊長が射撃した場所へと赴き調べるが、分隊長は狙撃兵の死体など無かったという。
そして無線で確認した所、数時間前に戦争が終わって事を知り、狙撃兵がいなかったのは、そのせいだと皆に笑われるブラウン二等兵、そんな事は無い筈だと思いながらも、人殺しをしなくて済んだ事を素直に喜ぶブラウン二等兵だが、実はブラウン二等兵は狙撃兵を射殺していたのであった。

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戦闘機や戦車や戦艦が、派手に戦うシーンが描かれる事は無いが、これもまた紛れも無い戦争のワンシーンであり、多くの人々が体験した戦争なのかも知れません……

それが島本先生が描いた「Battleフィールド」と言う作品なのです。

島本和彦と言う漫画家を語るならば、是非に目を通して置くべき作品です。


今日はこれにて……
posted by 蛙雷 at 19:04| Comment(0) | TrackBack(1) | 古本話
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